『赤毛のアン』の島―プリンスエドワード島の歴史(ダグラス・ボールドウィン) - レビュー

お勧め度★★★★☆


ダグラス・ボールドウィン著、
赤毛のアン』の島―プリンスエドワード島の歴史」は、
赤毛のアン」の舞台として有名な、
プリンス・エドワード島歴史を紹介した本です。



この本はもともと、
学校の教科書として執筆されたものですが、
一般読者からの人気も高かったため、
一般向けに書きなおされたそうです。


また、
著者ボールドウィンは、筑波大学大学院でカナダ・コースを担当し、
これを期に、日本語訳が出版されることになったそうです。
序章として、日本人向けに、
赤毛のアン」が日本で人気がある理由についての考察が、
付け加えられています。


本のタイトルが「赤毛のアン』の島」とはなっていますが、
この本で、「赤毛のアン」について触れられているのは、
序章と第十七章の数ページくらいです。
その他は、戦時下の島の様子の描写としてL.M.モンゴメリが引用されていたり、
州の歌プリンスエドワード島賛歌」がL.M.モンゴメリによる作詞であると、
簡単に紹介されている箇所がある程度です。


モンゴメリファンにとっては、
少々物足りない感じがするかもしれませんが、
この本の目的は、
赤毛のアン」以外のプリンスエドワード島を知ってもらいたい、
ということのようです。


まえがきによると、

カナダやプリンスエドワード島、そして『赤毛のアン』に対する日本人の関心の大きさは、驚くほどでした。(中略)そうではあっても、プリンスエドワード島についてはもっとたくさん知るべきことがあります。とりわけ、毎年『赤毛のアン』の故郷を訪れている何万人もの日本人には、もっと知って頂きたいのです。


とのこと。


訳者あとがきでも、

本書を翻訳したいと考えた動機の一つは、プリンスエドワード島を訪れる日本人のあまりに『赤毛のアン』一辺倒な観光パターンだった。(中略)わざわざこの島までやってきてアンだけでは、あまりにも一面的にすぎるように思われる。


とのことで、
もっと、多面的に、
プリンスエドワード島を知る助けになる本となっています。


ミクマク族が住んでいた島に、
フランス人が移住してきてアカディアとなり、
その後で、イギリスが非情なやり方で島を占拠し……、
と歴史が紐解かれていきます。


章立ては以下の通りです。


  • 日本の読書の皆さんへ
  • 序章 赤毛のアン』と日本
  • 第一章 「おかえりなさい」の島
  • 第二章 最初の島民
  • 第三章 サンジャン島――見捨てられた土地
  • 第四章 ミクマク族とアカディア
  • 第五章 フランス支配の終結
  • 第六章 島の開拓
  • 第七章 難船、苦闘、開拓民の生活
  • 第八章 初期の島の政府
  • 第九章 政治と土地問題
  • 第十章 連邦結成
  • 第十一章 船が出るぞ
  • 第十二章 働く人々の世界
  • 第十三章 変革の時代
  • 第十四章 戦争、ラム酒、経済
  • 第十五章 不況、第二次大戦、協同組合運動
  • 第十六章 読み、書き、算数
  • 第十七章 娯楽
  • 第十八章 女性の権利のための闘い
  • 第十九章 多文化の花開く島
  • 第二十章 島らしい生き方
  • 付章 島をもっと知るために
  • 訳者あとがき





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