少女小説から世界が見える ペリーヌはなぜ英語が話せたか(川端有子) - レビュー
お勧め度★★★★★
川端有子著、
「少女小説から世界が見える ペリーヌはなぜ英語が話せたか」は、
少女小説を研究者の視点から、歴史的な流れに沿って論じた本です。
この本において「少女小説」という言葉は次のように定義されています。
この本で扱う少女小説についてはいちおう、十九世紀の終わりから二十世紀にかけて、欧米で書かれた少女向けの家庭小説をさすことにしておきたい。
その定義に当てはまる五冊の物語を、
この本では、書かれた年代順に論じていきます。
それぞれの少女小説を歴史のなかに再び置きなおしてみよう、というのが本書のもくろみである。
とのこと。
五冊の物語については、以下の5つの章で語られます。
この五冊を並べて論じた結果、
まったく超歴史的な世界の中に終始しているように見えるこれらの作品が、おたがいに、政治的・歴史的関連をもち、グローバルな経済システム内に組み込まれていることが見えてきた。
とのことで、普遍的に見える家庭生活の物語が、
実は、政治的歴史的な背景に強い影響を受けている、ということですね。
また、これらの物語の共通点についても興味深い考察がなされています。
たとえば著者は、このように言っています。
こういった共通点が明らかにしていることを要約すれば、世間一般の枠からはみ出していると自覚する少女が、さまざまな経験と葛藤の末、枠にはまるように成長していく話だといえる。
なるほど、孤児であったりボーイッシュであったりする主人公が、
一人前の女性へと成長する過程が描かれる少女小説を、
そのように捉えることもできますね。
各章の冒頭では、
それぞれの物語のあらすじや背景について簡潔にまとめられており、
その作品をまだ読んでいなくても、
議論が理解できるように工夫されています。
少女小説がアカデミックな場で研究されるようになったのは、
最近のことなのだそうです。
この本も2006年に出版された最近のもの。
大変興味深い一冊です。
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