赤毛のアンの源流? - 少女レベッカ(ケート・D・ウィギン) - レビュー
お勧め度★★★★★
「少女レベッカ」はケート・ダグラス・ウィギンによる
アメリカ家庭小説の一つです。
書名 | 原題 | 出版年 | 作者 |
---|---|---|---|
少女レベッカ | Rebecca of Sunnybrook Farm | 1903 | ケート・ダグラス・ウィギン |
この本を読んでいると、
「赤毛のアン」と驚くほど似ていることに気づきます。
「少女レベッカ」は1903年出版、
一方、モンゴメリが「赤毛のアン」を書き始めたのは1904年ですから、
「赤毛のアン」のモンゴメリが、
「少女レベッカ」の影響を受けていた、という可能性が出てきます。
似ているところですが、
まずはタイトル。
「少女レベッカ」の原題は「Rebecca of Sunnybrook Farm」
(サニーブルック農場のレベッカ)。
「赤毛のアン」の原題は「Anne of Green Gables」
(グリーンゲイブルズのアン)。
パターンが同じですね。
そして、イントロのシーン。
年配の男性が操る馬車に乗り、
ひっきりなしのおしゃべりで相手を圧倒しながら、
これから暮らす町にやってくる主人公。
赤毛のアンのイントロとよく似ています。
そして、話の流れを、訳者あとがきから引用すると、
たいへんな空想家で、またたいへんな情熱家でもあるレベッカの、少女時代から、しだいに女としてめざめてゆく過程を描いたこの小説は……(以下略)
とのこと。
いきいきと勉学に励む様子もアンとよく似ています。
「少女レベッカ」の5章「知恵の道」では、
授業中に喉が乾いて、レベッカが何度も水を飲むシーンが出てきます。
すると、レベッカに好意を寄せている少年も水を飲む、
そのせいで恥ずかしい思いをする、というエピソード。
これも見覚えがあります。
同じ5章の後半では、
クラスのみんなからプレゼントが届く描写がありますが、
これも、アンが登校拒否から復帰した時の描写によく似ています。
「少女レベッカ」は「若草物語」とならんで愛読されているとのこと。
モンゴメリは若草物語を読んでいたとのことなので*1、
「少女レベッカ」も読んでいたかもしれません。
ちょっとショッキングですが、
是非読み比べてみてください。
追記
『完全版・赤毛のアン』(原書房、1999)の解説p.454に、次のような一節がありました。
また一九〇三年には、ケイト・ダグラス・ウィギンによる『サニーブルック農場のレベッカ』の主人公が登場し、文学史上もっとも有名な孤児の一人となった。この小説と『赤毛のアン』との類似点は明らかで、多くの人々がこの点について論じている。(中略)これほどアンとレベッカがよく似ていれば、このアメリカの人気小説がモンゴメリに大きな影響を与えたことは明らかであろう。ただし作品が全体として何を伝えようとしているかという点に関しては二つの小説はまったく違っている。
やはり似ていますよね、アンとレベッカ。
よろしかったら一日1クリックで応援して下さい。
↓励みになります。
にほんブログ村
*1:『赤毛のアン』p.510。モンゴメリ著、松本侑子訳。集英社文庫、2000