銀の森のパット・シリーズ(L.M.モンゴメリ) - レビューとあらすじ

お勧め度★★★★★


「銀の森のパット」シリーズは、
赤毛のアンで有名な、ルーシー・モード・モンゴメリによる、
シリーズの一つです。


村岡花子による訳では、
続編の「パットお嬢さん」しかありませんが、
前編の「銀の森のパット」は、
篠崎書林New Montgomery Booksから出ていますので、
全編を楽しむことができます。


また、谷口由美子による訳が、角川文庫から出版されています。
銀の森のパット」、「パットの夢」の2冊からなります。

銀の森のパットシリーズ一覧

書名はAmazonの商品詳細ページにリンクしています。

書名 原題 パットの年齢*1 内容 出版年 種類 原文
銀の森のパット Pat of Silver Bush 7〜18歳 パットの少女時代からヒラリー(ジングル)の旅立ちまで 1932 小説 PGA
パットお嬢さん(パットの夢) Mistress Pat 20〜30歳 真実の愛に目覚めるまで 1935 小説 PGA

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あらすじ

美しい銀の森屋敷を深く愛し、
変化を激しく嫌うパット
ジュディばあやと兄妹たち、友人のジングルに囲まれ、
一生このままでいられたらと願っている。
しかし、彼女の周囲は次々と変化し、
人々はやって来ては去っていく。
遂には、
パットの最も愛するものにも変化が訪れる。
変化を乗り越え、
彼女は真実の愛を見付けられるのか…

考察1 登場人物の呼び名について

村岡花子でも、篠崎書林田中とき子訳でも、
パットの妹レイチェルの呼び名を、
ピー子」と訳しています。
村岡花子に合わせて、田中とき子訳でも、
この「ピー子」という訳が採用されたのだと思いますが、
ずいぶん違和感のある訳語です。


原文を調べてみると、「ピー子」と訳されているのは、
"Cuddles"という言葉。 英辞郎で調べてみると、
【名】寄り添うこと
【自他動】抱き締める、すり寄る、抱いてかわいがる
とあります。


すりすりしたいようなかわいらしい赤ん坊のイメージでしょうか…。
それにしても、
なぜ「ピー子」などという訳語になってしまったのでしょうね。

パットたちがジュディに呼びかける箇所では、
どちらの訳でも、
おばちゃん
となっていますが、
原文では、"Judy"と名前で呼びかけています。
ジュディ」とそのまま訳せばいいような気がしますが、
不思議ですね。

考察2 主人公パットについて

モンゴメリ銀の森のパットシリーズの女主人公パットについて、
アンに似た女主人公」と言っていたそうです*2
でも、私個人の感想では、アンとは随分違う印象の主人公でした。


アンパットも、
木や自然が大好きで、友だちも大事にしますが、
アンは根本的に世界のあらゆるものが好き、
というイメージなのに対して、
パットは、新しく彼女の前に現れるあらゆるものを、
人でも物でも、まずは憎みます。
やがて愛着を持つようになる場合もあれば、
ますます憎しみをつのらせる場合もあります。


アンシリーズとは違い、パットシリーズは、
愛というよりもむしろ憎悪にいろどられた話に
なってしまっているのです。
作者ルーシー・モード・モンゴメリ自身の、
当時の不幸な結婚生活が、作品にも影を落としているのでしょうか。


物語の最後、
パットは自分の狭量な世界から出ないわけにはいかなくなります。
それによって初めて、真実の愛にも目覚めることになるのですが、
そこは読んでのお楽しみ…

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*1:年齢の根拠。「銀の森のパット(上)」第二章で「七歳」とある。この時に生まれたピー子が1歳になった頃、ジングルど出会う。「銀の森のパット(下)」第三十九章では、ジングルとの出会いから10年がたったとあるので、計算するとパットはこの時18歳。一方、「パットお嬢さん」の冒頭ではパットは二十歳となっており、第一年目から第十一年目までの章立てで物語が進む。十一年目には30歳になっている

*2:『赤毛のアンの世界』p.182。M.ギレン著、中村妙子訳。新潮文庫、1986。